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?W. 小外傷術後におヅる経口抗菌薬投与の是非についての検討

 

A. 背景

 

外科手術後における予防的抗菌薬投与については定まった方法がいまだない1)2)。また汚染創を伴わない小外傷の術後でも、感染予防の目的で慣例的に、あるいは営利的観点から経口抗菌薬が投与されているのが現実と思われる。本研究は、小外傷術後における経口抗菌薬投与の現状を把握し、その是非について検討することを目的とした。一次調査として、自治医科大学卒業の外科系医師を対象に1)どのくらいの割合で術後抗菌薬を出しているか、どのような種類の抗菌薬をどれだけの期間投与しているのか、いままでに同剤によりどのような副作用を経験したかをアンケート調査した。

 

B. 結果

 

117名よりアンケートが回収された(回収率33.3%)。小外傷術後に全例抗菌薬を投与している者は57名(48.7%)、症例により投与を決めている者は59名(50.4%)であった。またまったく投与しないと答えた者が1名いた(図2)。
抗菌薬の第一選択としてセフェム系が85名(72.6%)、ニューキノロン系が12名(10.3%)、ペニシリン系が10名(8.5%)であった(図3)。
抗菌薬を投与するかしないかの判断として肉眼所見や受傷後の時間を上げている者が多く、その他として、年齢や糖尿病の有無と答えていた(重複あり)(図4)。
抗菌薬を投与する際の日数は、3日が約70%で最も多く、次いで4日が17.9%、5日以上と答えた者が7.7%いた(図5)。
また抗菌薬投与をさらに継続する場合の判断として肉眼所見(発赤など)や圧痛などの理学所見を上げていた(重複あり)(図6)。これまでに経験した抗菌薬の副作用に関して、薬疹や胃腸障害が多く、次いで肝機能障害や白血球数や血小板数の減少などの血液系障害を上げていた。その他として肺水腫、筋融解症、全身痙攣から心停止に至った重篤な症例を経験したものもいた(図7)。

 

 

 

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